対偶とは?

命題と対偶
よく使われる記号
言葉の置き換え
ド・モルガンの法則
命題の分割と対偶
論理パズルでの対偶
実際にパズルを解くときには

命題と対偶

「昨日その店は休みだった」や「3は偶数である」のように、客観的に正しい(真)か、正しくない(偽)かを判断できる文を「命題」と呼んでいます。

2つ以上の命題を「かつ」「または」「ならば」などでつなぎ、さらに複雑な命題を作ることもできます。そうした組み合わせによる命題のうち、特に「AならばBである」という形のものについて、「BでないならばAでない」としたものを、元の命題の「対偶(たいぐう)」といいます。

※A、Bともに「~でない」に逆転しているのと同時に、AとBが「ならば」の前後で入れ替わっていることに注意!
もし元が「~でないならば」だと、対偶では「~ならば」になります。
〈例〉
「AでないならばBである」の対偶は「BでないならばAである」

具体的な例でみてみましょう。

〈例〉
奇数であるならば、2で割り切れない」の対偶は?

※以下の説明では、「ならば」の意味で矢印記号「⇒」を使い、「奇数である⇒2で割り切れない」のように表しています。

① 「⇒」の左右それぞれの事柄を、逆の内容(否定)に直します。
「奇数である」→「奇数でない」
「2で割り切れない」→「2で割り切れる」

※下の《言葉の置き換え》も参照してください。

② ①で作った2つの否定の文を、元と左右を入れ替えて「⇒」の両側に置きます。
元「奇数である⇒2で割り切れない」

「2で割り切れる⇒奇数でない」

これを文に直した「2で割り切れるならば、奇数でない」が、元の命題の対偶です。

元の命題と対偶は、「正しい、正しくない」が一致するという性質を持っています。つまり、元の命題が正しければ対偶も正しいし、逆に対偶が正しければ元の命題も正しいといって良いということです。(正しくない場合も同じ関係が成り立ちます。)

☆命題と対偶
命題「AならばBである」の対偶は
「BでないならばAでない」

元の命題が正しいときは、対偶も正しい
対偶が正しいときは、元の命題も正しい
(正しくない場合も同様)

《よく使われる記号》

・「否定」の記号表現
数学などでは、ある事柄の否定を表すのに、文字の上にバー(横棒)を書いて表す方法を使うのが一般的です。
〈例〉
ある事柄を「A」と表すと、その否定は「A

この方式を使うと、命題「AならばBである」を矢印記号「⇒」を使って
「A⇒B」
と表すとき、その対偶は
BA
となります。

もう一つ例を出すと、元の命題が「AでないならばBである」なら、
元の命題「A⇒B」
その対偶「B⇒A」
と表されます。

・「かつ」「または」の記号表現
命題中に2つ以上のまとまり(集合)が出てきて、それらについて「かつ」「または」という言葉が使われることがありますが、それぞれ記号「∩」「∪」で表すことができます。

「AかつB」=「A∩B」
「Aであり同時にBである(AとB両方該当)」

「AまたはB」=「A∪B」
「AまたはBの少なくとも一方(AとBのどちらか一方、あるいは両方)」

なお、論理的な関係を表す場合は少し形が違う記号が使用され
「かつ」=「∧」
「または」=「∨」
となります。

《言葉の置き換え》

上で述べたように、ある事柄を逆の内容にする、つまり「否定」にするときは
「である」↔「でない」
という置き換えを行いますが、これ以外にも次のようなルールがあります。

・「すべての~」↔「ある~」
〈例〉
元「すべての生徒は出席している」
否定「ある生徒は出席していない」

・「ともに~」↔「少なくとも一方は~」
〈例〉
元「生徒A,Bの少なくとも一方はテニス部である」
否定「生徒A,Bはともにテニス部でない」

・「AかつB」↔「AまたはB」
(記号化して考える場合は少し注意が必要です。下の「ド・モルガンの法則」の説明もご覧ください。)
〈例〉
元「飴かつチョコレートを買う」(=「飴とチョコレート両方を買う」)
否定「飴またはチョコレートを買わない」

※「飴またはチョコレートを買わない」は日常使われる言葉としては少し不自然な感じのする表現ですが、論理パズルではこのような言い方を時折見かけることがあります。論理パズルの中でこうした言い回しが使われる場合、それは通常「飴またはチョコレートの少なくとも一方は買わない」つまり「飴またはチョコレートのどちらか一方、または両方を買わない」の意味を表すものとして扱われます。

したがって「飴またはチョコレートを買わない」という文には
「飴は買わずにチョコレートは買う」
「チョコレートは買わずに飴は買う」
「飴とチョコレート両方買わない」
の3つのパターンが含まれることになります。

〔参考〕ド・モルガンの法則

「かつ(記号:∩)」「または(記号:∪)」を含む事柄の否定は、それが具体的に何を指しているのか混乱しがちです。そんなときに助けになるのが「ド・モルガンの法則」です。

ド・モルガンの法則については、高校のとき、数学で集合を学ぶ際に習った方が多いことと思います。記号で表すと
A∩BAB
A∪BAB
の2つです。

例えば「野球かつサッカーが好きである」という条件を「野∩サ」と表した場合、その否定は「野∩サ」となります。
(上の《言葉の置き換え》の中で、否定では「かつ」↔「または」、つまり「∩」↔「∪」の置き換えが起きると書きましたが、この段階では「∩」は「∩」のままであることに注意してください。)
これをそのまま言葉にすると「野球かつサッカーが好きでない」ですが、何を指しているのか分かりづらくないでしょうか?

ド・モルガンの法則を使って形を変えてみます。
野∩サ
右辺は「野球が好きでない、またはサッカーが好きでない」となり、これだと先程より具体的にイメージしやすいでしょう。(こう書いてみると、上で述べた「かつ」↔「または」の置き換えが起きる理由がよくわかりますね。)

なお、この場合も、前述の飴とチョコレートの例と同じく、「野球が好きでない」「サッカーが好きでない」「野球・サッカー両方とも好きでない」の3つが含まれることに注意してください。

《命題の分割と対偶》

「かつ」や「または」を含む複雑な命題は、次のようにより単純な命題に分けて扱うことができます。

①「Aならば『PかつQ』」は
「AならばP」と「AならばQ」の2つに分けられる。

②「『PまたはQ』ならばB」は
「PならばB」と「QならばB」の2つに分けられる。

実際の例でみてみましょう。まず①について。

〈例①〉
「この学校の卒業生ならば、資格Aと資格Bの両方を持っている。」

「資格Aと資格Bの両方を持っている」は「資格Aを持っており、かつ資格Bも持っている」ということですから、この命題は上の①のタイプになっています。この学校の卒業生は皆AとB両方の資格を持っているので、全員について資格Bの有無とは切り離して必ず資格Aを持っていると言えるし、同様に、資格Aの有無とは切り離して必ず資格Bを持っていると言えます。したがって元の命題が成り立つなら
「この学校の卒業生は、資格Aを持っている」
「この学校の卒業生は、資格Bを持っている」
の2つも独立して成り立つことになります。

もちろん、それぞれの対偶
「資格Aを持っていないかまたは資格Bを持っていないならば、この学校の卒業生ではない。」
「資格Aを持っていないならば、この学校の卒業生ではない。」
「資格Bを持っていないならば、この学校の卒業生ではない。」
も同時に成り立ちます。

※元の命題の対偶について、「資格Aと資格Bの両方を持っている=資格Aを持っており、かつ資格Bも持っている」の否定は「資格Aを持っていないかまたは資格Bを持っていない」となることに注意してください。
上の《「否定」を考えるときの注意》で書いたように、否定では「かつ」↔「または」の置き換えが起きます。

次に②の例です。

〈例②〉
「東京都内に住んでいるかまたは都内に勤務しているならば、このイベントの参加資格がある。」

この命題が成り立つとき、次の2つおよびそれぞれの対偶も成り立ちます。
「東京都内に住んでいるならば、このイベントの参加資格がある。」
「東京都内に勤務しているならば、このイベントの参加資格がある。」

対偶
「このイベントの参加資格がないならば、東京都内に住んでおらずかつ都内に勤務していない。」
「このイベントの参加資格がないならば、東京都内に住んでいない。」
「このイベントの参加資格がないならば、東京都内に勤務していない。」

なお、紛らわしいですが次のパターンは上のような分割できません。
「Aならば(PまたはQ)」
「(PかつQ)ならばB」

もし上に挙げた〈例①〉が
「この学校の卒業生ならば、資格Aまたは資格Bを持っている。」
だとしたら、後半はA・Bのどちらか一方、あるいは両方を持っている人を指すことになり、「この学校の卒業生は、資格Aを持っている」は常に成り立つとは言えません(卒業生の中にはBだけを持っている人もいる可能性があるため。「この学校の卒業生は、資格Bを持っている」についても同様。)

同じく、〈例②〉が「東京都内に住んでおりかつ都内に勤務しているならば、このイベントの参加資格がある。」なら、「東京都内に住んでいるならば、このイベントの参加資格がある。」とも「東京都内に勤務しているならば、このイベントの参加資格がある。」とも言えなくなります。

ただし、分割はできませんが対偶の利用は可能です。

例えば
「この学校の卒業生ならば、資格Aまたは資格Bを持っている。」
が成り立つなら
対偶「資格Aを持たずかつ資格Bも持っていないならば、この学校の卒業生ではない。」
も成り立ちます。

論理パズルでの対偶

論理パズルでは、直接「~ならば…である」という言い方ではなくても、その形に言い換えられる条件が出されることがよくあります。このとき、元の条件の「対偶」に当たるものを作ると、それも問題を考える条件に加えることができます。

〈例〉
問題の条件に「野球部員は寮に入っている」(=「野球部員ならば、寮に入っている」)があるとき、その対偶「寮に入っていない者は、野球部員ではない」もその問題を考える条件として使うことができる。

こうして条件を増やすことで、問題を解く手がかりをより多く得られます。

《実際にパズルを解くときには》

実際に解くときには、問題の条件を手元にメモしながら作業をすると考えやすいでしょう。その際に、いちいち「野球部員は寮に入っている。」などと書くのは面倒なので、例えば「野球部員である」ことを「野◯」、「寮に入っている」ことを「寮◯」などとして
 「野◯→寮◯」
とか、「合唱部員は寮に入っていない。」なら
 「合◯→寮×」
といったように、簡単な記号で書くことをお勧めします。自分で分かればよいわけですから、漢字を使わず「ヤ◯→リ◯」「ガ◯→リ×」でも、「y◯→r◯」「g◯→r×」でもOKです。

このように記号化することで、対偶を考える作業がより簡単になります。

なお上の《よく使われる記号》でも書いたように、ある事柄の否定について文字の上にバー(横棒)を書いて表す方法も広く使われています。(特に公務員試験対策の参考書などは、この方式で書かれていることがほとんどです。)

〈例〉
「寮に入っている」を単純に「リ」と表すとすると、「寮に入っていない」は「」。
「ガ◯→リ×」は「ガ→」とより簡潔に書けます。

「◯×方式」でも「横棒方式」でも、自分で分かりやすい方を使ってください。

具体的な例で見てみましょう。()内は「横棒方式」の書き方です。

〈例1〉
元の命題「野球部員は寮に入っている」
=ヤ◯→リ◯(ヤ→リ)

対偶「寮に入っていない者は、野球部員ではない」
=リ×→ヤ×(

〈例2〉
元の命題「合唱部員は寮に入っていない」
=ガ◯→リ×(ガ→

対偶「寮に入っている者は、合唱部員ではない」
=リ◯→ガ×(リ→

お気づきでしょうか?元の命題の矢印の左右を入れ替えて、それぞれ◯×を逆転させたもの(“横棒方式” だと上のバーの有り無しを逆転させたもの)が対偶です。
上の〈例2〉だと、「ガ◯」が矢印の左から右にきて「ガ×」に、「リ×」が右から左にきて「リ◯」になっています。

この関係を利用すれば、対偶を機械的に作ることができますね。

「ラーメンを食べなかった人は、アイスクリームを食べた」
元:ラ×→ア◯(→ア)
対:ア×→ラ◯(→ラ)

「カレーライスを食べなかった人は、プリンを食べなかった」
元:カ×→プ×(
対:プ◯→カ◯(プ→カ)

実際に問題を解いてみましょう!
〈対偶の利用〉例題